次世代の葬式
今日は会社で仕事をしています。
本当は自宅(ホームオフィス)で仕事をしてもいいのですが、打ち合わせがあったし、たまにはおしゃれして外出したいということもあるので、会社に出てきました。
やはり人と顔をつき合わせて会話をすることは楽しいのです。
さて、そろそろ四時半、会社を出る前に今日の買い物オーダーを済ませておこうと思い机の上のコンピュータから自宅の冷蔵庫コンピュータ「ネットフリーザー」を呼び出します。
もちろんこの二つのコンピュータはインターネットで接続されています。
ネットフリーザーの冷凍庫のドアに付けられた液晶画面には、近所のスーパーマーケットのチラシが表示されています。
その画像をそのまま会社のコンピュータにダウンロードします。
今日の特売品をチェックして、バーコードで管理されているネットフリーザー内の食品在庫状況と見比べて、必要なものをダブルクリックしておきます。
そして食品メーカーのホームページからダウンロードしておいた「ダイエット&ヘルシーなお客様料理」というビデオレシピを呼び出し、週末のパーティに備えて不足している材料もダブルクリック。
するとモニターはオンラインスーパーマーケットのサイトに切り替わります。
オーダーボタンを押して、帰宅してから一時間後に宅配されるように時間指定しました。
ついでに自分宛にきている電子メールも読みます。
子供から「友人のところで夕食を食べてから帰ります」というメッセージが届いていました。
メッセージの脇にある「通話ボタン」を押すと、すぐに子供の持っている携帯電話につながりました。
遅くならないうちに帰ることを約束させて、電話を切ります。
もう一通、大学の同窓会の案内メールが届いています。
会場は「***ホテル」です。
メール文中のホテル名をクリックして、ホテルのホームページにアクセスし、モニター上にホテルのビデオと地図を表示させ、場所を確認します。
さらにそこまでの道順をプリントして、参加ボタンを押しておきます。
会費の支払いはデジタルマネーをマウスでドラッグして、やはりメール文中の同窓会事務局の口座番号に重ねるだけで終了します。
また今日は家で「アナログな生活」というクラシック映画を見る予定です。
C・S・B会社(CSP/昔は電話局と呼んでいました)とトータルコミュニケーション契約を行うと、映画は付随する基本サービスとして二○○チャンネル、しかも24時間いつでも見られるようになります。
それに昔のケーブルテレビの頃と違って、ビデオを見ている感覚で、いつでも必要なときに止めたり、またスタートすることもできるので、それも大変便利です。
こうした古い映画には、今の店では売っていないような素敵な洋服や家具がたくさん出てくるので、それも楽しみの一つです。
というのも、気に入ったモノがあったら、それをクリックすれば、画面上にスペックや価格が表示され、オーダーボタンを押すだけで同じモノが宅配されるというショッピングサービスが付いているからです。
もちろん届いたモノが気に入らなければ、いつでも返品可能です。
CSPでも私の購買データを蓄積して、私の好みをよく知っているので、私好みの新しい映画や商品が出ると、電子メールで知らせてきます。
もちろんそうしたサービスが嫌ならば、断ることもできるのですが、けっこういいものが見つけられるので、たまには利用することもあります。
特に音楽CDや書籍に関しては、視聴や試し読みもできるし、本当に好みにぴったりのモノを見つけてきてくれるので、驚いてしまいます。
前述の未来生活はいかがでしょうか。
なんだかSF小説を読んでいるみたいですが、A社の目指している「スーパーキャリア構想」が実現すれば、こうした生活が現実のものとなってくるのです。
ここで重要なのは、すべての情報がデジタル化されているということです。
情報がデジタルに転換されていれば、それをどのようにでも変化させることが可能となり、もっとも使いやすい状態で提示できるようになります。
それがデジタルのパワーであり、そこにeビジネスの一つの本質があると考えます。
その情報が滞りなく流れるためのパイプを、他社に先駆けて完成させようとしているのが、A社なのです。
このパイプの中を流れるのは、音声、デジタルチラシ、画像データ、ホームページからダウンロードされた料理の作り方(ビデオ&テキストデータ)、電子メール、デジタルマネー、コンビニエンスストアの売上データ、商品情報、などなど……ありとあらゆるデジタルデータです。
こうなってくると通信とメディアとの境界は非常にあいまいになってきます。
通信業界とテレビやラジオなどのメディア業界が混ざり合わなければ、理想的なデジタルワールドを作り上げることは不可能です。
この章の最初の部分で、二つの業界をまとめて「通信・メディア業界」とした理由をおわかりいただけたでしょうか。
もともと電話会社であるA社と、もともとケーブルテレビ会社であるT社との合併はそうした意味においても、まさに時代の先端をいく画期的なものであるわけです。
NT紙が一面トップでこのニュースを取り上げていることの意味もご理解いただけましたでしょうか。
この合併に刺激されて、今後、様々な通信・メディア間の提携や合併が、国際規模で始まることと思います。
PHSの売上が落ちていることを問題にしていられるような時代ではないのかもしれません。
実は通信とメディアの融合に関して、誰がその主役となるのか、という問題が残されています。
リーダーシップを持って舵取りをしていく主体が誰なのか、ということによってその様相は一変してきます。
通信が主役となってメディアを取り込むというのがA社とT社の合併でした。
その逆にメディア企業が主役となって、デジタル・コミュニケーションにおけるゲイトウエィ、つまり「情報の出入りする場」を作ろうとする動きも、米国においては目立ち始めています。
このゲィトウェイという概念は今後のeビジネス、特にインターネットビジネスを見ていく上で重要な考え方になってきます。
また最近では、これが「ポータル」と呼ばれることもあるようです。
ポータルとはインターネットでネットサーフィンをしたり、電子メールを取り込む際のスターティングポイントのことです。
つまりインターネットの入り口となるような要素を持つホームページです。
たとえば、インターネットでゴールデンレトリバーというイヌの種類について調べようとする際、まず最初にすべきことはY社などのサーチエンジンのホームページにアクセスすることです。
そしてY社のページで「ゴールデンレトリバー」と打ち込んで、検索ボタンを押すと、この犬種に関して情報を発信しているいろいろなサイトが表示されます。
ですから、この場合にはYがポータルとなるわけです。
ポータルとして認められるようになるためには、圧倒的なアクセスを確立していること、つまりネットプレゼンスの確立が必要です。
Y社などはまさにこの条件を満たしているわけです。
Y社には月間七○○○万人もの人がアクセスしてきます。
しかも世界中からです。
これほどの視聴者を持っているメディアはそうざらに存在しません。
ポータルの地位を狙って動きを早めているいくつかの大企業があります。
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